―『私と月につきあって』
『ロケットガール』シリーズの３作目。
フランス人宇宙飛行士のうち２人も××する展開が『SFマガジン』と『本の雑誌』で批判されてたけど、これは繰り返しのギャグと読んでもいいでしょう。ＳＦ的手順のリアリティが見事なので、プロットのリアリティのなさが際立ったのでは（繰り返しのギャグは虚構性を強調する）。
そもそも、このシリーズはキャラクターも含めたプロット全体に通俗文芸批評的な意味でのリアリティはない。「人物の描写がマンガ的」とか「展開がアニメ風なのは読者を選ぶ」などの批判がされそうだけど、それこそが良いところなのだ。確かなＳＦ考証とヤングアダルトのツボを両立させられるのが『クレギオン』にも通じる野尻抱介の長所である。
本作も少女たちの健全さ、健気さ、真摯さが感動的で、その邪気のなさは聖女の趣まで漂わせている。「ソロモン宇宙局のちっちゃな天使さん」の二つ名は伊達じゃない。この人物造形に「リアリティがない」としてイチャモンをつける輩は初めから相手にしていないのだ。
がんばれ、女の子！ 未来は明るいぞっ。
野尻抱介 『私と月につきあって』 富士見ファンタジア文庫
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