―『EVE burst error』
超傑作。
ただし、うるさ型のミステリマニアに向けて、あらかじめ云っておく。「本格推理ＡＶＧ」ではないので、与えられた情報だけで唯一の真相を導けるように『EVE』はつくられていない。無論、フェアな推理ゲームをプレイヤーに挑むことが『EVE』のコンセプトではないのだから、このことは欠点ではない。もしかしたら、あえて真相に至るのを困難にすることで、ラストをより効果的にしようというゲーム的演出かもしれない。
欠点は、かなりの忍耐力を要求されるシステム（いまでは古すぎる）と、Ｈゲーム的な主人公が人によっては感情移入しにくいという２点だけ。
とにかく、最大の売りであるマルチサイトシステム（２人の主人公によって別々の物語を進行させ、やがて、ふたつの物語が交錯していくという手法）が見事だ。複雑きわまりないプロットをふたつの方向から絡めるようにして展開していくさまが圧巻である。
錯綜する人間関係。深まる謎。このシステムでなければ語ることができない物語をつくっている。そこには、マルチサイトシステム固有の物語感覚がある。つまり、システムとストーリーが一致しているのだ。同じ物語を別のシステムで語ることはできない。すごいね。
キャラクターが魅力的なのは、当然。各人が個性を光らせ、ぶつかりあって物語は進んでいく。
生きるとは何か？ 幸せとは？ 人間とは？ という骨太のテーマを扱っている点にも、称賛を送りたい。可愛い女の子のグラフィックに騙されて、軟派なゲームだと思わないように。これ以上は云わない。
楽なゲームではないし、元が１８禁ゆえに色々とアレなところもあるが、衝撃を受けたいという人には問答無用でおすすめ。
感動を保証する。
『EVE burst error』 企画・制作 シーズウェア サターン Windows