１２月
１２月１２日（火）
『イティハーサ』（ハヤカワ文庫）全７巻一気読み。
決して巧みな作品ではない。むしろ展開や演出は無骨。が、深い思索と鋭敏な直感によって語られる物語は圧倒的。日本SFの至宝とでも云うべき大傑作。
体調悪し。一週間以上、風邪が治らない。鼻水、のどの痛み。
１２月１８日(月）
「独立少年合唱団」を観る。
自分の物語と外界をすり合わせていく作業が成長なのだ。
その時、失われていくものは当然ある。
そういう話。
１２月１９日（火）
「バトル・ロワイアル」を観るため、朝イチで東映へ。
平日の初回にも関わらず、既に１０人近く並んでおり、待っている内に列が伸びていく。
以下、原作および映画の内容について言及する。未読、未見の方は読んでから（観てから）読むことをおすすめする。原作、映画ともに知らずにいるのは、あまりにももったいない。
……。
映画は設定の変更により、原作とテーマが大きく変わっている。
原作の柱はシステム対個人の戦いであり、自分達とは無関係のところで造られたシステムに従わざるを得ないことのやるせなさとそこからの突破が主眼となっている。国家対個人ではなく、システム対個人。国家を内包し、超越した概念としてのシステムを敵とすえることで高い寓話性を獲得している。
一方、映画では多発する少年犯罪に歯止めをかけるため「ゲーム」が行われるという設定である。つまり、大人対子供という構図。担当教師（キタノ）を描写することで、この構図がより一層鮮明になり、原作との方向性の違いを生んでいる。原作での担当教師（坂持）は、パロデイであると同時にシステムがキャラクターとして実体化した存在なのに対して、キタノはひとりの教師、父親、大人として描かれる。無論、これは意識的な転換であり、寓話性の減少により「今日的」なテーマが浮かび上がってくる仕掛けになっている。
設定の変更により、桐山もシステムの不条理を体現する非人間的なキャラクターから、殺人に喜びを見出すサイコ少年に変えられている。
ラストシーンが渋谷というのも象徴的（原作は梅田）。
以上、原作との違いを挙げてみたが、これらの変更が「全て」意味を持ち、作品のベクトルとして機能する。
決定的なのがラストの演出。
原作では川田が坂持を殺すが、映画では秋也がキタノを撃つ。このシーンにおけるキャラクター配置を確認してみよう。キタノは典子が好き。秋也も典子が好き。典子は秋也が好き。秋也は典子を守るために、キタノを殺す。キタノは自分を「殺させる」。銃を持っているにも関わらず、水鉄砲を撃つことからわかるように、キタノは子供達に殺してもらうことを望んでいた。自分を殺せなければ、秋也達に未来はないとでも言うように。そして、親殺しという通過儀礼を経て、秋也は武器を持つことを選択する。
ここでも大人対子供という構図が明確に示されている。あくまで、敵は大人（キタノ）なのだ。だから、桐山はただのサイコ少年になっている。原作のクライマックス近くで、秋也、典子、川田対桐山という壮絶なバトルが繰り広げられ、アクションの山場となっているが、桐山がシステムの象徴であることを考えればなんら不思議ではない。が、映画ではそうする必要はない。映画の桐山は極論すれば、「ゲーム」の展開を早めるためのニトロのようなものである。
結論、とてつもない傑作。原作変えても、出来上がったものが良ければいい。原作があまりにも素晴らしいので、つい比較してしまい、純粋に観れていないような気がする。もう１回観たい。
狸小路のロッテリアでてり焼きセットを買い、昼食。
シアターキノで「美術館の隣の動物園」を観る。
イントロにドラマチックな出来事を用意しておいて、そこから先は普遍的な物語が展開する。
愛らしい小品。
１２月２４日（日）
朝、起きるとのどが痛い。風邪いまだ治らず。
小林信彦の『２００１年映画の旅』（文藝春秋）を買う。
夕食に残り物のラムをつかって、ネギをたっぷり入れたラーメンをつくる。
来年の２月に大きな仕事を控え、急速に忙しくなりつつある。帰宅後も書類をちょこちょこ。
１２月２５日（月）
卵３個で目玉焼き、トースト２枚とバナナの朝食。
夕方から大通へ。
『ライオンハート』（恩田陸 新潮社）を買ってから、松竹遊楽で「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を観る。
手持ちカメラによるドキュメンタリータッチの粗い画面を基本にすることで、妄想のミュージカルシーンが生きてくる。息子の名前がジーン（遺伝子）というのが象徴的。
１２月２６日（火）
『工学部・水柿助教授の日常』（森博嗣 幻冬舎）買う。
仕事が立て込み始める。夜も書類とにらめっこ。
「よみがえる夏の悪夢！ 激務、再び！！」。
１２月２８日（木）
シアターキノで「PARTY７」。
レディースデイなので、極めて混んでる。
キャラクター、脚本、演出が完璧に組み合わさり、一級のコメディ空間を作り上げている。
フレッシュネスバーガーでレギュラーとコーヒー。軽く腹ごしらえをした後、夜は飲み。
できないことは、あきらめた方がいい。
１２月２９日（金）
『猿を探しに』（柴田元幸 新書館）買う。
１２月３０日（土）
なじみの店がどこも休みで、夕食はラムと卵とネギのラーメン。
１２月３１日(日）
普段より２時間早く仕事が終わったが、それでも家に着く頃にはスーパーは閉まっていた。よって、夕食は吉野家。大盛、味噌汁、卵、ポテトサラダ。
帰宅後、洗濯機をまわしながら、資料づくり。