◆2006/12/07 更新◆
１０月１２日（木）
青山劇場で『奇跡の人』（作：ウィリアム・ギブソン 演出：鈴木裕美）。
「奇跡の人＝ヘレン」だと思っていた。主人公はサリヴァン先生＝原題『ＴＨＥ ＭＩＲＡＣＬＥ ＷＯＲＫＥＲ』＝直訳「奇跡を起こす人」。
田畑智子が、若々しく無鉄砲で未熟だけど情熱に満ちたサリヴァンを好演（ケラー家に家庭教師としてアニー・サリヴァンが招かれたのは２０歳の時）。
躾けと教育の違い。
躾けは動物にもできる。
教育は人間に対してしかできない。
躾けとはルールを外部から与えること。
教育とは「生徒自身の中にある答えに気づかせること」。
力に満ちた脚本。
１０月１３日（金）
『ティンブクトゥ』（ポール・オースター著 柴田元幸訳 新潮社）読了。
人間の言葉を解する犬とその飼い主のホームレスの物語。
ストーリーテリングは絶妙で過去と現在を行き来する構成には、小説を読む喜びがあふれている。作品全体に漂う「手遅れ感」によって、「取り戻せない何か」が物語の背後にぼんやりと浮かび上がり、感傷的な読後感を残す。
１０月１９日（木）
丸の内ピカデリー１で『夜のピクニック』。
有楽町という劇場の立地のせいかもしれないが、年配の観客が多い。
作品の方向性が完全に客層を読み違えている。おそらくターゲットを若年層に設定していると思われるが、現役の中高生にはこの映画の良さは伝わりにくい。
普遍的なテーマを普遍的な演出で描いて、ごくごくストレートな作りにすれば、もっと引き締まっただろう。正直もったいない。滑りまくりのギャグは全て不要（中高年以上をターゲットに含めていたら、ああいうギャグや演出は出てこないはず）。
『博士の愛した数式』、『夜のピクニック』、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』……これまでの本屋大賞は全て映画化している。大資本による市場への介入を嫌って始まった本屋大賞が、結局企業の「飯のタネ」にされることに忸怩たるものを感じつつも、映画化が出版業界にとって追い風になることも事実。本屋大賞は難しいところにきている。
１０月２０日（金）
渋谷アミューズＣＱＮシアター２で『マーダーボール』。
車いすラグビーのアメリカ代表チームを追ったドキュメンタリー。
こういうエンターテインメント性の高いドキュメンタリーを作ってしまう（作ることができる）感性と企画力がすごい。