◆2006/06/15 更新◆
５月１日（月）
世界には悪意が潜んでいて、突然、牙をむくことがある。
それは全く予測不能で、時として自分が襲われたことすら気付かない。
とても悲しい、誰ひとり幸せにならない結末。
始まりは、ほんの小さなすれ違いだった。
このままが壊れることなんてないと思っていた。
すれ違いは加速して、緊張の頂点に投げ込まれた悪意の塊は３年間の全てを壊した。
５月１１日（木）
トースト、紅茶、ヨーグルトの朝食をとり、洗濯をすませ、出掛けるために着替えながら、床に落ちたものを拾おうとしたところ、生涯３度目のギックリ腰。
一日中、腰痛バンドを付けて過ごす。
午後は懸案の仕事をひとつ片付けた。
夜、痛み止めを飲んで少し楽になる。
明日も休みなのが不幸中の幸い。
許すこと。
忘れること。
５月１４日（日）
新宿ピカデリー閉館。
たしかに、空いていた。いつ行ってもガラガラだった。行くのが常に平日だから（空いているの）だろう、と思っていたが、経営的に苦しかったのか。将来はシネコンが建つらしいけど、どうなるんだろう。たくさんのハリウッド大作映画をここで観た。新宿で３番目（のはず）に大きい映画館が、今日消えた。
５月１８日（木）
昼過ぎまで会社で仕事。
新宿武蔵野館３で『ブロークン・フラワーズ』を観る。
何かを喪失したことははっきりしているのに、何を失ったのかわからない。
自分の人生に大きな影響を与えたのに結局真相がわからなかったこと、ありますか？
人生の絶対的なわからなさ。
それでも、次の一歩は踏み出せる。
５月２３日（火）
今までに失ったものではなく、これから手に入れるもののことを考える。
５月２４日（水）
素晴らしい好天。
昼過ぎのひかりで京都へ。
車中、駅弁にて昼食。夕刻、京都着。
堀川通に面したビジネスホテルにチェックイン。休暇なのだから、「ちゃんとした」ホテルに泊まりたかったが、部屋がとれなかった。
荷物を整理してから外出。西本願寺を左に見ながら堀川通を北上して、地下鉄烏丸線で四条通へ。錦小路通をブラつく。が、時間が遅いせいか、それとも定休日なのか、シャッターを下ろした店が多い。
四条大橋を渡り、八坂神社へ参拝。平日の夕方だというのに、参道の人通りは多く、世界的な観光都市であることを改めて思い知る。
夕食は鴨川を眺めながら、ひつまぶし。
５月２５日（木）
本日も晴天。
ＪＲで宇治へ。
平等院、宇治上神社、三室戸寺を訪ねる。
平等院鳳凰堂の存在感は格別。
想像していたよりも小さい印象を最初受けたが、じっと見ていると大きさとは別の迫力を感じる。辺りを埋める修学旅行生の嬌声と喧騒が気にならなくなる。場の力がすごい。正直、大きくない。前面の阿字池も浅く小さい。にも関わらず、圧倒的な量感がある。空間構成の巧みさ。背後に広がる青空も計算に入っている。正面にぽつんと立つ石灯籠に妙に惹きつけられた。
宇治川を渡って、宇治上神社を経由して三室戸寺を目指す。
川を越えると修学旅行生はひとりもいなくなる。
三室戸寺がいい。
風情ある山寺。
ツツジ、シャクナゲが終わり、アジサイにはまだ早く、庭園は緑一色。
急峻な石段を登り詰めた先に広がる本堂と鐘楼。見回せば、新緑の中、三重塔が浮かび上がる。
アジサイが満開の時季に来てみたいと思わせる。
京都に戻って、駅構内で弁当を買ってから嵯峨野線で嵐山へ。
嵯峨嵐山駅の待合室で駅弁を食した後、天龍寺。
曹源池と向き合う。
３枚組の石橋の意味などわかるはずもないが、とにかく向き合う。
京福線で御室へ。
仁和寺を訪ねる。
白書院、黒書院をつなぐ渡り廊下が素晴らしい。
市街へ戻り、先斗町の小料理屋へ。
夕食は懐石。
５月２６日（金）
今にも降りだしそうな曇天。
朝、三十三間堂へ。
高校の修学旅行で一度訪れているが、何度来てもいい。
昼過ぎの新幹線で帰京。
５月２９日（月）
新宿ジョイシネマ３で『アンジェラ』。
観客は１０人ちょっと。
ダメ男×「？」というオタク男子系コミックの定番プロットをリュック・ベッソンが撮るとこうなる。
帰宅後、仕事。叩き台完成。
夜、再び新宿へ。飲み。
ひたすら、Ｗ杯話。
とりあえず、ドイツは決勝まで行くだろう。あらゆる政治的手腕を駆使して。
ベッドに入る直前に、本棚から１冊抜いて、以前読んだことのある箇所を拾い読みすることがある。
『孤独のグルメ』（久住昌之・谷口ジロー 扶桑社）最終話を読み終えて、同じ作者の『散歩もの』（フリースタイル）の最初の数ページをめくった後、隣にあった『瞳子』（吉野朔実 小学館）を手にとった。
最後のページを開いて茫然とする。
５年前初めて読んだときには全く意味のわからなかったことが、はっきりわかった。
５月３１日（水）
渋谷ル・シネマ１で『ＲＥＮＴ／レント』。
舞台の映画化は難しい。
本作では、登場人物のひとり（映像作家を目指している）がいつも回しているカメラの映像を効果的にインサートすることで、作中世界を映画の文法に落とし込むことに成功している。そこさえクリアすれば、あとは俳優たちの圧倒的な歌声に集中できる。とにかく、歌がすごい。オープニング・ナンバーの“Ｓｅａｓｏｎｓ ｏｆ Ｌｏｖｅ”が素晴らし過ぎて、それしか耳に残らないような気もするけど、、それでいいのだ。
夜は池袋へ。サンシャイン劇場で『恋愛戯曲』（作・演出：鴻上尚史）を観る。
「恋は唐突な不条理」
「なんの客観的証拠もないけれど、それはたしかに存在する（それが恋）」
ラスト直前の観客を芝居の世界に引きずり込む演出が見事。
脚本の完成度、閉塞感がもたらす現代性という点では『トランス』の方が上だが、本作にはポップさがある。