◆2005/01/31 更新◆
１月１日（土）
新宿ジョイシネマで『マイ・ボディガード』。
デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニングという芸達者な主演２人を観ているだけで、充分満足。
いつもの定食屋が休みなので、夕食は久し振りに自炊。
きざみネギ入りベーコン付き目玉焼きダブル。
１月７日（金）
新宿スカラ１で『ターミナル』。
きちんと「割り切れる」映画。
スピルバーグは、こういうわかりやすい映画を撮るときの方がいきいきとしている。『Ａ．Ｉ．』、『マイノリティ・リポート』というＳＦ大作シリアス路線の迷走を経て、前作『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』から本来の持ち味が戻っているように思われる。でも次回作は『宇宙戦争』（主演トム・クルーズ！）。大丈夫か？
ビームスのセールでネクタイを４本購入。全てネイビー系。ドッドを３本、ストライプを１本。
１月１０日（月）
新宿シネマミラノで『銀のエンゼル』。
何を見ても、その時読んでいる本に引きつけて解釈してしまうことがある。
ちょうど『現代思想のパフォーマンス』（難波江和英、内田樹・著 光文社新書）を読んだ直後だったので、そういう観かたになってしまった。この本の結論は「バルトとレヴィ＝ストロースとラカンが「だいたい同じこと」を言っている（後略）」（４２４ページ）であり、「人間は交換する動物である」ということが書かれている（と思う。多分）。
この映画でも「交換」が重要な行為として描かれている。
以下、ネタバレ注意……。
『「家出する」』という娘（佐藤めぐみ）のメッセージに対して、父親（小日向文世）は『おにぎり』を渡す。トラックの兄ちゃん（大泉洋）は『父親の気持ち』を娘に届ける。すると娘は●●●来る。深夜のバイト君（西島秀俊）は『泊めてもらった』お礼（？）に、おばあちゃんのために『抜け道』を造ってあげる。
何かを受け取って、それに対する返礼をすることが、物語を動かしている。だからこれは紛れもない「人間の物語」である。
父と娘の間には「交換」がない状態（コミュニケーションの途絶えた状態）が長く続いていて、その不自然さが噴き出した「娘の家出」を乗り越えたことで、結果、２人の間に再び「交換」が始まる。
だから、ラストが娘と父の手紙の交換で終わるのは極めて正しい。返信があって始めて、「交換」（＝コミュニケーション）は成立したと言える。
割り切れない部分をあちこちに積み残したまま終わるところも素晴らしい。
生きている限り、「交換」は続いていく。
これ、いい映画です。
１月１３日（木）
新宿ミラノ座で『カンフーハッスル』。
ギャグなのかシリアスなのか、最後まで判断に苦しむ。
前作『少林サッカー』はギャグであることがはっきりしていたから、「ギャグなのにシリアスな展開」になること自体が「熱血ギャグ」として成立したが、今作の場合シリアスなシーンは「真剣にシリアス」なせいで、結果としてシリアスな脚本とギャグな演出の齟齬が作品に破綻をもたらしている。
１月１７日（月）
新宿スカラで『ネバーランド』。
ジョニー・デップの素晴らしさが喧伝されているが、それだけではない。映画としての完成度が圧倒的。演出は格調高く、画面作りも丁寧。完璧な傑作。
観てよかったと心から思える映画。
１月２４日（月）
新宿ピカデリー１で『オーシャンズ１２』。
脚本が成功しているとは言い難い。後半ははっきりと失敗していて、続編の難しさを露呈している。キャストが好きならどうぞ。それ以上の映画ではない。
１月３１日（月）
新宿グランドオデヲン座で『オペラ座の怪人』。
役者の生のからだを見せる舞台の魅力をそのまま映画に移すのは、無理。舞台をそのまま映画にしても、舞台の「縮小再生産版」にしかならない。さて、映画『オペラ座の怪人』はこのハードルをクリアすることができたか？
物語の主要な舞台となるオペラ座の構造上の最大の特徴は、華やかな舞台（上層部）と暗い地底湖（下層部）の対比である。舞台で縦の移動を見せるのは難しく、映画ならではの見せ方が期待されるところだが……冒頭のクリスティーヌ（エミー・ロッサム）が初めて主役として舞台に立ち、喝采を浴びるシーンでは、床の割れ目を使った大胆なカメラワークを見せてくれるのに、それ以降は消化不良気味。もっと思いっきりカメラを振り回してほしい。
一方で、カットバックを使った全体の構成は、いかにも映画的で物語にリズムとメリハリを与えている。つまり、ある面では成功して、ある面では物足りない。
結局、映画『オペラ座の怪人』の魅力のほとんどはミュージカル『オペラ座の怪人』の魅力と重なる。
そう考えると、２０世紀を代表するミュージカルがパッケージソフトとして、手軽に楽しめるものになったのは喜ばしいことだと云える。
女の子にかけられた呪いについての「父」と「娘」と「若者」をめぐる原始的な物語。
ひとつひとつの場面の密度と作り込みは魅力的で、キャストも素晴らしい。
あまりにも有名な数々のメロディを聴いているだけで、至福の時を過ごせる。
舞台を観た人は必見。観ていない人は、これを観た後に舞台もぜひ。
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