◆2005/01/01 更新◆
１２月１３日（月）
午前中は会社で仕事。その後、歌舞伎町へ。セントラルロードのマックでベーコンレタスバーガー。
コマ東宝で『ゴジラ ファイナルウォーズ』。客層は圧倒的にマニア、年配が中心。
「ゴジラ」の名前を使って、北村龍平が自分の作りたいものを撮った（ような）映画。怪獣映画ではなく、ヒーローアクションもの。ストーリー上、ゴジラはおまけに過ぎない（ゴジラの戦いがなくても、ストーリーが成立する）。特撮の緻密さは『平成ガメラ』に遠く及ばず、売り（だろう、多分）の格闘シーンにも特筆すべき要素はなし。
伊勢丹で黒の靴下、南口ルミネのアローズで白のシャツを購入。
１２月２０日（月）
新宿文化シネマ１で『ハウルの動く城』。
上映館が多いせいだろう、（宮崎アニメにしては）比較的空いている。
原作もそうだげど、これは『美女と野獣』の裏返しである。
醜い外見と粗暴な言動の裏に優しい心を秘めている野獣（男）と美しい外見と美しい心を持つベル（女）という構図に対して、ハウル（男）は美しい容姿に身勝手で独りよがりな性格、でも実は優しい心の持ち主、ソフィー（女）は“老婆”という醜い容貌の中に優しい心を持っている。つまり、「醜い」という要素を与えられるキャラクターの性別を逆転させている。
『美女と野獣』、『ハウル』どちらの作品においても、ヒロインが落ち着きと寛容さを持った成熟したキャラクターであるのに、男キャラはあくまで内面的に未熟な存在として描かれているのがポイント。ダイアナ・ウィン・ジョーンズはファンタジーというジャンルに対する自意識が強く、“批評的な”作風が持ち味。……で、アニメとしてどうなっているか？
以下、ネタばれ……
ストーリー（物語の骨格、キャラクターの設定とそれぞれが抱えている葛藤、およびその解決方法）はしっかりしている。が、プロット（物語の運び方、状況や展開の説明の段取り、筋立て）がひどすぎる。
ソフィーの呪いの意味。
「老婆」であるというのは未来を奪われた存在であるというメタファー。冒頭で主体性に乏しいことを妹に指摘されることからわかるように、ソフィーは人生に対するやる気がない。ソフィーが自分の意志を強く発揮した時、呪いは弱まる（少女の外見に戻る）。そう考えると、眠っている時は呪いが解けるのも説明がつく。睡眠時は無意識の状態だから、本来の姿に戻る。意識がある時は、社会的な制約（例えば、自分は長女だから父親の残した店を守らなければならないとか）に支配されて、自分の主体性を放棄している故に、呪いが強く作用する。誰かのことを想うことはソフィーの主体性（人生のやる気）の現れであり、ハウルを強く愛した時、呪いは解ける。
対して、（映画ではほとんど描写されない、そしてそれ故わかりにくくなっているが）ハウルはとんでもないプレイボーイで本気で人を愛することができない。
それは何故か？ 実はよくわからない。例えば、カルシファーと契約した時に強大な魔力（圧倒的な才能？）と引き換えに、心臓（魂、こころ、ひとを愛する気持ち）を失ってしまったから、という解釈もできる。が、いまいち辻褄が合わない。ハウルはいつ、どうして、ソフィーを好きになったのかわからない。原作者が女性ゆえに男の子は不可解な存在として強調されているだけかもしれない（つまり、ハウルが何を考えているかは原作者にもわからない）。
やる気のない女の子と、ひとを愛することのできない男の子が出会って、お互いを強く想うことで人生の意味をみつける、そういう物語です。
で、それが伝わってるのか？ ということです。
これは映画を観た全ての人に聞かないとわからない。
個人的には、成功しているとは思えない。説明すべきところと省略してもよいところを間違えているような気がする。いつまでたっても物語が始まっていないように見える（誰が、何をしたいのか全くつかめない）。
アクションの組み立ても杜撰で、およそカタルシスにはほど遠い。
例をあげる。
サリバン先生の追手をかわして、王城から主人公２人が脱出するシーンがあるが、ハウルが「５分間だけ姿を見えなくする。その間に逃げろ」と云うだけで、演出は平板で全く盛り上がらない。
このシーンのプロット上の機能は「敵のアジト（絶対絶命のシチュエーション）からの脱出」。
過去の作品から同様のシーンを見てみると、『カリオストロの城』の屋根上のシーン（銭形と不二子の即興コンビプレーで手負いのルパンを救い出す）、『ナウシカ』でのペジテの飛行艇からの脱出（音楽と画面のシンクロが素晴らしく、雲上すれすれを飛ぶナウシカのメーヴェに機銃掃射が迫るシーンは鳥肌もの）、『ラピュタ』の要塞からのシータ救出（中盤のクライマックス。圧倒的な戦力差の中、フラップターの機動性を活かして、シータを救い出す。暴走するロボット兵の攻撃で炎に包まれる城塞、巨大戦艦を煙幕でかく乱する海賊、激しい爆音と炎の中で突然訪れる静寂の一瞬、塔の上で絶叫するシータ、そして救出……複数のキャラクターが同時に動き、個々の思惑が複雑に絡みつつ、混乱することなく、完璧な山場を構成する）。『ハウル』のアクションは、比較する気にもなれないほど平凡で退屈。
以上、個人的な感想。映画を観る行為は純粋に個人的な行為であり、そこから何を見出すか（見出せるか）は人それぞれで、それぞれの見かたに意味がある。
新宿ピカデリー２で『僕の彼女を紹介します』。
脚本の説得力は皆無。物語内のリアリティのレベルも滅茶苦茶。
にも関わらず、ヒロイン（チョン・ジヒョン）の圧倒的な魅力だけで作品が成立している。フィルムに映った結果が映画であるということがわかる。意味はそれを見た人（読者）の中にある。
１２月３０日（木）
銀座テアトルシネマで『舞台よりすてきな生活』。
このタイトルだとハートウォーミングな内容を想像してしまう（実際、配給会社はそういう方向で宣伝している）が、原題は『ＨＯＷ ＴＯ ＫＩＬＬ ＹＯＵＲ ＮＥＩＧＨＢＯＲ’Ｓ ＤＯＧ（隣人の犬を殺す方法）』。
辛口ユーモアが全編を貫く、かなりビターな映画。
１２月３１日（金）
この部屋で過ごす大晦日も３年目。
こんなに長い間、東京で生活することになるとは思わなかった。
人生には予測不能なことが多過ぎる。
そして、往々にして予測不能なことほど重要であることが多い。
つまり、人生において重要なことは（大抵の場合）予測できないということだ。
周到に準備を進め綿密に予定を組んだ計画が、自分の努力とは全く関係ないことでほころんだり、あるいはその逆に全く準備をしていなかったのに、予想外のクリーンヒットがでたり。
自分の努力でコントロールできる部分と、できない部分を精確に見極める力が、大切。