◆2004/09/29 更新◆
９月６日（月）
新宿武蔵野館１で『華氏９１１』。
ムーア史観の是非はとりあえず置いといて、ここに映されたものは世界のひとつの姿。真実かどうかなんて、もちろんわからない。
編集とは世界を切り取って、それをつなぎ合わせること。解釈は観るものに委ねられる。それって、メディアそのものに他ならない。
確信犯的なボケぶりが相変わらず笑わせてくれる。
９月１３日（月）
ワークショップ無事終了。
帰る途中、原宿のユナイテッドアローズで冬物のスーツを購入。ダークグレーの無地。
夜は自炊。東京に来て、２回目の自炊。牛肉とネギの炒め物。
９月１６日（木）
渋谷シネアミューズイーストで『誰も知らない』。
８月に来たときはあまりの混雑ぶりに断念したが、夏休みが終わったせいか、すんなり入れた。
冬の商店街、春の歩道、夏の公園、雑然としているのに誌的な雰囲気の漂うアパートの部屋……映像の美しさは圧倒的。
客観的でありながら、決して冷たくはない演出。
“役者”たちの演技は、ほとんど奇跡。
主人公の長兄の倫理観が、映画全体を引き締めている。
安易な結論（母親が悪いとか、子供たちは健気だとか）へと流れることを許さない厳しさがある。
ちびたクレヨン、請求書の裏の落書き、ベランダに並んだカップラーメンの鉢植え。
ディティールの積み重ねが状況を構成して、「誰も知らない」ままではいけない現実を突きつける。
９月２７日（月）
本日より休暇。
３時半過ぎ、那覇に入る。
台風の影響で風が強い。
南国特有の甘ったるい匂いが立ち込め、空気が濃密な感じがする。
ちらほら見かける空き店舗と人通りの少なさが、街全体に鄙びた印象を与えている。
ホテルにチェックインの後、マチャグヮーといわれる国際通り南側の市場街へ。途中、サーターアンダーギーを２個（プレーンタイプと黒糖タイプ）買って、齧りながらブラブラ歩く。衣服、食材、果物、菓子類、生活雑貨、アクセサリー、土産物……地元民から観光客まで相手にした雑多な商店が、アーケードの下に立ち並んでいる。異質な匂い、異質な色彩。アジア的混沌。
第一牧志公設市場２階で、遅い昼食として沖縄そば。
その後も、那覇市内を散歩。
夜は国際通り脇の沖縄定食屋で夕食。ジューシー（シイタケと人参の入った炊き込みご飯）が美味。副菜のミミガーの味が新鮮。豚の耳をピーナッツバターで和えたものだが、コリコリした独特の食感とピーナッツの甘さが豚の肉っぽさに絡んで、何とも言えない。珍味の部類であることは間違いない。
台風は明日も、沖縄に居座るらしい。
雨が降らないことを祈る。
９月２８日（火）
依然として、風は強い。が、幸い雨は降っていない。
モノレールで首里城公園へ向かう。
“琉球テーマパーク”のような趣のある首里城よりも、玉陵の方が面白い。遺跡好きは必見。
夕食は国際通り東端の定食屋。ゴーヤーチャンプルー定食とソーキ（豚のアバラ骨付きスペアリブ）の煮付け。
９月２９日（水）
旅することの意味がわかってきたような気がする。
日常と違う時間を過ごすこと自体に意味がある。日常と違う街、違う部屋、違う食事。何か特別なことをしなくても、違うところに行くだけで価値がある。移動することが旅だ。
旅において、ほとんどの時間は歩いているか、待っているかのいずれかである。その間、ひたすら何かを考えている。この考えている時間こそが旅だ。
生まれ変わりたい瞬間がある。いったん死んで生き返ることができたらいいと思う。それがかなわないから旅に出る。
再生の儀式。緩やかな自殺（ただし、日常へと帰還する）としての旅。
昼の便で帰京。
台風よりひと足早く到着。
東京は夜から激しい雨。