◆2004/06/04 更新◆
５月１０日（月）
その人のために時間を割くことは、最高のプレゼントだ。
時間はお金では手に入らない故に、最も価値がある。どんなに高価な贈り物でも、それが『商品』である限りはお金を払えば手に入れることができて、誰かにあげることができる。だけど、１時間一緒にいることは、どんなにお金を払っても、できないときには決してできない。
５月１７日（月）
渋谷シネマライズで『ロスト・イン・トランスレーション』を観る。
コメディの演出がなされているが、テーマはシリアス。主人公達が抱えている問題意識は極めて高度資本主義的なものであり、日本人には共感しやすい。というか、アメリカ人も日本人と同じような問題を抱えていることが、逆に新鮮に思える。
手持ち（？）と思われるカメラを多用したブレ感のある画面とにじむような映像に『ひかりのまち』（傑作！！）を思い出した。ロンドンの市井の人々の暮らしをドキュメンタリー風に撮った『ひかりのまち』と本作は、演出スタイルに通じるところがある。カメラを通して表現されるリアル。渋谷のスクランブルをビニール傘をさして、ヒロイン（スカーレット・ヨハンソン）が歩くカットは、（日本人の観客にしてみれば）日常であるにも関わらず、カメラというフィルターを通すことで非日常的な異界へと姿を変えている。人生はとてつもなく楽しいものではないけど、どうしようもなく寂しいものでもないという当たり前の「あきらめ」が、描かれている。
５月２１日（金）
やったことがないことは、失敗する。
失敗を重ねて覚えていく。
５月２７日（木）
新宿コマ東宝で『世界の中心で、愛をさけぶ』。
ＳＦ読みとしては原作を認めることは決してできないが、監督が行定勲だから。
大筋は知っていたけど、実際に観てはっきりわかった。
典型的なセカイ系（キミとボクの物語）。
古典的なメロドラマと云われているが、メロドラマをアレンジして「泣き」のドラマとして現代に通用する作品へと作り変えるのは、９０年代以降オタク文化においてさんざんなされてきたことであり、なにを今さらという感がぬぐえない。オタク文化を礼賛するつもりはないけど、ようやく時代がオタクに追いついただけのことだと思う。
というわけで、ストーリーにはノーコメント。
「泣き」のドラマ作りに徹するなら、劇中に平井堅の主題歌を流して、回想シーンを挿入するとか、色々やりようはあるのに、演出はよく言えばストイック、悪く言えば物足りない。描いてほしいところが描かれていなくて、描かなくてもいいようなところが描かれている。なんとも中途半端な構成。どうせベタベタなストーリーなんだから、演出もやり過ぎなぐらいでよかったのではないだろうか。
ただし、過去篇の撮影と美術は素晴らしい。きらめく日々を光の粒が見えるような叙情的な画面にまとめている。
５月３１日（月）
新宿ピカデリー１で『トロイ』。
この映画がつまらなく感じられるとしたら、ストーリーのせいとしか云えない。
プロットの主軸となる戦いは極めて愚かなものであり、その愚かさの中で英雄たちが傷つき死んでいく。ギリシア神話のストーリーから、キャラクターとしての神々を排除して（原作の『イリアス』には神が登場する）、リアルな人間活劇にしたら、理不尽なストーリーと演出のリアルさがはっきりと齟齬をきたしている。
戦いの目的そのものが愚かだから、大軍が対峙、激突しても興奮がない。
こんな脚本なのに、役者はよく頑張っている。
未熟な弟王子と時代遅れの父王に足を引っ張られながら、絶望的な戦いに向かうヘクトル（エリック・バナ）は、人間の気高さを伝えている。
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