◆2004/04/29 更新◆
４月１日（木）
冬のスーツをクリーニングに預けた後、新宿へ。中央通りのウェンディーズで朝食。
テアトル新宿で『きょうのできごと』を観る。
学生時代ならではの「ぬるま湯のような」ひと晩の出来事。ちょっと、学生の頃を思い出した。
新宿通りを渡って、ＲＡＧＴＡＧへ。コートとニットを売る。６，８００円。
おはちでカキフライ定食。
原宿に移動して、マウロ・グリフォーニでジーンズを買う。細身で緩やかにテーパードしたグリフォーニの定番モデル。夕方からジム。
４月６日（火）
『花とアリス』、『きょうのできごと』どちらもいい映画で、どちらが上かを判定するのは意味のないことだが、あえてどちらか選ぶなら『花とアリス』を推す。
電車に乗っていて隣に座っている男の子達（１０代〜２０代前半）の会話が何を話しているのか全くわからないことがある。発声、イントネーション、単語、同じ日本語と思えない。彼らと自分の間では言葉が断絶している。違う言語を話しているわけではなく、会話を貫くスタイルが理解できなくなっている。
各人がそれぞれの巣穴にこもって、隣の巣穴の人間とは言葉を交わすこと（コミュニケーション）ができない状態。この状態の終着点（あるいは通過点）のひとつとして、あの９．１１の同時多発テロがある。アメリカとアラブ系テロリストは（地球上において）隣人である。その隣人間で言葉が通じ合っていない。テロリスト達の主張が全て間違っているわけではなく、アメリカが全て正しいわけでもないことを世界中の人がわかっている（だろう、多分）。お互いにコミュニケートすることで何らかの答えを導ければいいのに、それが成立しない。言葉が通じない状況。
ひとりひとりが巣穴にこもった状況を横につないでいく言葉が必要だ。
好きな女の子に声をかける時、こころ良い返事が返ってくることなんて（めったに）ない。それでも、人は声をかける。相手の巣穴に向かって言葉を投げ込む。投げ込まずにはいられない。おそらく、投げ込んだ言葉は無視されるか、冷たく突き返されるのがオチだろう。それでも投げ込む。それが人間の意志だ。それが人間と人間をつないでいく。
『花とアリス』にはそれがある。
いつも落語の文庫本を読んでいる宮本（男の子）はハナ（主人公の１人）のことは知らない（見ていない）。それでもハナはちょっとしたきっかけをつかんで強引に宮本にコミットしていく。この瞬間、ハナは自分の巣穴から這い出して、宮本を彼の巣穴から引きずりだそうとしている。これがコミュニケーションだ。
『花とアリス』では別の巣穴にいる相手に言葉を届けようとするエピソードがいくつも語られる。アリス（もう１人の主人公）は実父（離婚して別居中）と久し振りに会った帰り際、覚えたての中国語で父親に向かって「（中国語で）あなたが好きです」と叫ぶ。それは本当に切実な叫びだ。“花屋敷”のエピソードもコミュニケーションそのものを語っている。クライマックスの舞台袖のシーンも緊張状態の中で言葉がやりとりされる。ギリギリの状況で交わされる言葉が、人と人をつないでいく。
対して、『きょうできごと』は映画の世界がまるまるひとつの巣穴だ。彼らはその巣穴の中だけで生きている。否定するつもりはない。共同体は現代社会が失ってしまったものの中でも、取り戻したいもののひとつだ。だけど、現実は共同体の回復だけでは解決できない段階に進行している。『きょうのできごと』の懐かしさは、学生の頃の微温的空間を思い出させる。その居心地の良さはどこまでも甘美で忘れがたく、それ故美しい。だが、その巣穴から這い出して、隣の巣穴に目を向けた時、人は大人に近付く。
優れて現代的なテーマに取り組んでいる『花とアリス』を推す。
４月８日（木）
洗濯機を回しながら、午前中は寝て過ごす。昼頃起きると、商店街のマックで朝食の後、渋谷へ。シネセゾンで『エレファント』。ストーリーは事実だが、ディティールはフィクション。現実の事件をフィクションとして再構成することで、ニュースやドキュメンタリーとは別種の衝撃が生まれている。物語る力は強い。
４月１５日（木）
素晴らしくいい天気。
初夏のような暑気。
上野へ。
東京国立博物館で「空海と高野山」。
巨大な曼荼羅が圧倒的。
銀座線で渋谷へ。
パルコのアニエスｂ．で水色のＴシャツを買う。生地が二重になっていて、重ね着風のつくり。
原宿のアローズで夏物のスーツを受け取り、帰宅。
夜は衣替え。
４月２６日（月）
新宿ピカデリー１で『キル・ビル ｖｏｌ．２』。
前作の持ち味だったケレン味たっぷりの演出とヤリ過ぎ感漂う美術は影を潜めて、おとなしい映画になってしまった。前作には祝祭的感覚があふれ、痛快な作品に仕上がっていたが、今作は主人公の感情に焦点を当て、ストーリーのシリアス度が高まったのに反比例してバカばかしさが減っている。テンションを上げることの難しさを感じる。