◆2003/12/25 更新◆
１２月１日（月）
激しい雨。今日で３日目。
渋谷シネ・アミューズイーストで『幸福の鐘』。
結構混んでるなと思ったら、窓口で「１，０００円になります」。
お金を払ってから、今日が映画の日であることに気付く。
ソロの客が多いのは単館系ならでは。
やっぱり好きだね、この雰囲気。
殺された者と殺した者、自由と拘束、生者と死者、大金と貧乏、穴と星空。
徹底した対比の構図。
わらしべ長者的彷徨の果てに主人公がたどり着いたのは……。
鉄工所、桟橋、海岸……『画』が美しい。
井ノ頭通りに出て、東急ハンズで卓上カレンダー、ロフトでクリスマスカードを買う。
全身鏡を探すが、サイズの点で断念。どれも大きすぎる。
ＨＭＶでワイヨリカの『フルーツ＆ルーツ』。
センター街の中華料理屋でニンニク芽炒めライス。
１２月４日（木）
ベンチプレスをしていて、右肩に痛みを覚える。バーベルをラックから外す際に、肩関節の内部に痛みがある。
軽いメニューで切り上げ、帰宅。
先週から、右肩に若干違和感を感じていたが、どうやら本当に痛めているようだ。
コンドロイチンを２錠飲む。
しばらく様子を見よう。
１２月５日（金）
肩の痛みが原因で、ひどい頭痛。
夜、シャワーを浴びるまで治まらなかった。
失敗、失敗また失敗。
同じ過ちは繰り返さない。
もう、二度とこの場所には戻らないという自分への戒めとして、証拠となるものを持ち帰る。
これを見るたびに、今日のことを思い出すだろう。
１２月８日（月）
新宿ピカデリー１で『ラストサムライ』。
トム・クルーズファンとチャンバラファンを動員して、かなりの混雑。
開場３０分前に劇場に入って、正解。
“万年２５歳俳優”と云われたトム・クルーズも年相応の渋みが出てきた。
しかし、今作で特筆すべきなのは日本人俳優の存在感。
日本の映画にトム・クルーズが出演しているように見えるくらい。
歴史的には架空の戦争を描いてはいるけれど、観念的には“あった戦い”。
武士道と滅びの物語が、ラストでは愛と安らぎの物語になるのは、いかにもハリウッド流。
職場の女の子が「美味しいですよ」と教えてくれたラーメン屋『桜吹雪が風に舞う』で遅い昼食。
スープが絶品。こってりしているのに、しつこくない。もやしとのからまり具合が絶妙。シャリッとしたもやしの表面にとろみのあるスープがからんで、抜群の食感が生まれている。麺については、個人的にはもう少しコシがあった方が好きだけど、まあ良し。
１２月１５日（月）
渋谷、シネクイントで『ジョゼと虎と魚たち』。
予想どおり混んでいる。
座席数２００以上の劇場がほぼ満席。
東京でここ１館しか上映がないのだから、当然。
客層は完全にミニシアター系。
妻夫木聡、池脇千鶴、主演の２人が素晴らしい。
妻夫木聡はうまくなった。勢いだけで見せていた『ウォーターボーイズ』の頃からは数段レベルが上がっている。雰囲気があるし、変なクセのないところがいい。すごいストレート。
池脇千鶴のスクリーンでの存在感は圧倒的。つくづく映画向きの女優だと思う。
かつて恋をした人、これから恋をするであろう人のための超一級の恋愛映画。
お互いがお互いを好きになっていく過程、好きになった後の心遣いの描写が完璧。
ヒロインの“ジョゼ”は脚が不自由で歩けないという設定であり、性格もかなりエキセントリックではあるが、ここで描かれる恋愛は、誰かに恋をした全ての人に通じる普遍的な物語である。
誤解を恐れずに言うならば、全ての女の子は（ジョゼが歩けないように）何らかの欠損を抱えているし、全ての男の子は主人公恒夫のように、身勝手で弱い生き物だ。そして同時に、全ての女の子はジョゼのように気高く愛らしく、全ての男の子は恒夫のように優しくたくましい。
そんな２人が出会い、恋をする。
今まで、地球上で何千回、何万回、何億回繰り返されてきた陳腐で切なく美しい物語。
幾つものシーンが、観客自身のかつての恋愛の記憶に重なっていく。
優しさ、わがまま、気遣い、性急さ、包容力、あきらめ、愛しさ。
２人の主人公がみせる個々の感情が自分の経験とオーバーラップしていき、観ているときはどうってことのないシーンも、後から思い出してみるとあまりにも美しく、かけがえのない瞬間であったことに気付くとき、それこそが恋愛そのものに他ならないことを知る。
本年度ベスト級の傑作。
１２月２２日（月）
新宿文化シネマ４で『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』。
ベトナム戦争以後、バブル前のアメリカ、ニューヨークのハーレムに暮らす一家の再生を描く。
小さなエピソードを羅列しているように見えて、非常に緻密な脚本。
個々のキャラクターの配置、シーンの展開、台詞の意味……全てがクライマックスの“三つ目の願いごと”に向けて、慎重に組み立てられている。
不幸な過去にとらわれ、“幻想”の中で生きる家族が、“現実”へと戻ってくるために何が必要だったのか？ 勇気が一家の再生の希望を生む。
いい映画です。
１２月２４日（水）
世間はクリスマスイヴ。
ハレ（非日常）とケ（日常）。本日は正真正銘の『ハレ』の日。
ハレというスペシャルな１日があることで、ケの澱み（社会的、精神的に日常的に加えられているストレス、疲労、きしみ）が吹き飛ばされ、翌日からのケに向かう活力を生む。
ハレの１日を過ごすことで、人生には意味があることを再確認する。あるいは、ハレがあることで人生は意味があるものだと“錯覚”できる。
社会を円滑に進行させるための安全弁、社会を守るための儀式としてのスペシャルな１日。
そーいうものも必要だよね。
いつもの定食屋で、茄子味噌炒めと肉じゃがを食いながら、そんなことを考えた。
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