◆2003/12/01 更新◆
１１月１日（土）
稲本、マンチェスターＵ戦でファインボレー。
つくづく、不思議な選手である。
稲本はヒーローではないかもしれないけど、こういうプレーにちょっとしたアイドル性がある。
ヒーローとは何か？
アメリカＷ杯のロベルト・バッジョ、仏Ｗ杯最終予選の岡野、日韓Ｗ杯のカーン……彼らはヒーローだった。
ヒーローはピンチの時に現れる。
Ｗ杯の歴史において、開催国とビッグ４（ブラジル、ドイツ、イタリア、アルゼンチン）以外の国が優勝したのは遠い昔のウルグアイだけ（１９５０年ブラジル大会）。
つまり、Ｗ杯においてビッグ４は常に『優勝』を国民から期待されている。日韓Ｗ杯開幕前、ドイツの下馬評はビッグ４中最低だった。ドイツ国民は誰もファイナルまで進むことを予想していなかっただろう。
だが、カーンは導いた。
ドイツチームを決勝の舞台まで。
彼はまぎれもないヒーローだった。
日韓Ｗ杯、稲本はベルギー戦、ロシア戦で連続ゴールを決めた。だが、あれはヒーローの所業ではない。アイドルのプレーだ。１次リーグは、所詮“序章”に過ぎない。Ｗ杯において試合の悲壮感と熱度はトーナメントが進むにつれて、加速度的に急上昇する（正確には、最終予選で緊張感がピークに達した後、いったん沈静化して、開幕後、再び上昇する）。そもそも、開幕時、日本チームは“ピンチ”ではなかった。故に（どれほどテンションが高くても）1次リーグでの活躍はヒーローの誕生を意味しない。
では、トルコ戦でゴールを決めたらヒーローだったのか？
この判断は難しい。
あの一戦は、異常にテンションが低かった。
一発勝負のトーナメントの意味がわかってないんじゃないかという気がした（選手も監督も国民も）。
その原因を７番勝負の日本シリーズを天王山と考える国民性にあるんじゃないかと考えるのは単純に過ぎるかもしれないけど、あながち間違っていなかったりして。
ドーハの悲劇でＷ杯に出られない悔しさを知った日本人は、今回のＷ杯で一発勝負の意味を学んだ。こうして、国民の記憶が蓄積されていく。
１１月９日（日）
小選挙区で俺が投票した候補者が当選したことはないような気がする。
万年死票。
１１月１０日（月）
新宿ピカデリー１で『マトリックス レボリューションズ』。
巷で酷評されるのも、むべなるかな。
スミスの正体（意味）さえわかれば辻褄は合うんだけど、大多数の観客は納得しないだろう。
３部作のラストが気になる人以外は観る必要なし。話題になっているから観に行く、というタイプの映画ではない。
個人的には前２作のような新しいビジュアルイメージを打ち出していない点が物足りないけど、堂々たるオタク映画として完結しているので満足。
クライマックスのドラゴンボールばりの空中バトルは迫力あるが、豪雨の中の殴り合いは『火山校』が先にやっちゃったからねえ。
１１月１７日（月）
新宿文化シネマ４。ショーン・コネリーが見たくて『リーグ・オブ・レジェンド』。
『エントラップメント』の時には彼のアクションが見られるのはこれが最後だろう、と思ったけど、今作でも動く、動く。走り回って、銃をブッ放し、悪漢を殴り飛ばす。『ザ・ロック』の頃よりは明らかに動きが鈍ってキレも落ちているけど、あいかわらず、男らしさは圧倒的。御年７３歳（！）。好きだぜっ、ショーン・コネリー。
貴族趣味満載でスチームパンクな道具立てが楽しい（ドリアン・グレイの書斎、ノーチラス号のレーダー）。
このクォリティで連続ＴＶドラマだったら、すごく嬉しいかも。
１１月１９日（水）
日本×カメルーン戦。
夕食のために入った定食屋で後半途中から見る。
この試合に勝つことを最優先とするなら、大久保は投入しないで柳沢のままで良かったような気もするけど、大事なのは“本番”。交代も良し。
小野は代表だとどうしてダメなんだろう？ あんなものじゃないはずなのに。好きな選手だけに悲しい。信じてるぜ、伸二。
クロスの精度の低さがゴールチャンスを遠ざけるのは、あいかわらず。
スルーパスとグラウンダーのクロスだけで、点を取るのは苦しい。
１１月２０日（木）
上野へ。
冷たい雨にも関わらず、「大英博物館の至宝展」は長蛇の列。というわけで、パス。国立西洋美術館の「レンブラントとレンブラント派」を見る。
レンブラントと言えば宗教画、物語画つまりは聖書の世界。
ちょうど『ヨーロッパ思想入門』（岩田靖夫著 岩波ジュニア新書）を読んだ直後なので、個人的には非常にタイムリー。
ヨーロッパ思想の源流、神の存在と意味について何らかの“答”を出さない限り、前に進めない西欧文化の姿が見えてくる。
とは言え、ヨーロッパ全土がキリスト教化される前の土着の文化、宗教がヨーロッパ文化の通奏低音として流れているのも事実。キリスト教に侵略されて、今は消え去ってしまった（かに見える）文化に触れなければ、ヨーロッパは見えてこない。
「大英博物館展」を見れば、その辺りの補完ができるかも。だけど、あの混雑はなあ。会期が終わりに近付けば、さらに人が増えるものだし。大英博物館の展示品を見られるなんて、一生に一度級のチャンスだけど、やっぱり行かないだろう。
１１月２４日（月）
新宿ピカデリー４で『東京ゴッドファーザーズ』。
技術的には非常にレベルが高い。
精妙なキャラクターアクションと圧倒的な美術。
背景描写が素晴らしく、幻想的な『雪の積もった東京の風景』を創り出している。
が、総合的には……う〜ん。
３人の主人公は『戦おう』としない。『戦うこと』をやめてしまった主人公たちが、クリスマスの奇跡に導かれて、ちょっぴりだけ新しいことを知る、という物語。劇中、唯一『戦った』ギンちゃんは、その“ご褒美”として、ささやかな幸運を手にするけど、それすら、彼の境遇を今後決定的に改善するものになるとは思えない。
『アンダルシアの夏』の方がよい。
自分の才能も能力も社会的にダメ出しされかけている主人公（解雇寸前の自転車レーサー）が、己の誇りと意地をかけて勝負に出る物語。そこに奇跡はない。結果は、それを求めて挑んだ者にだけ訪れる。
まるっきり正反対の物語。
技術的には、自転車レースのパート以外は観ているのが苦痛なほどレベルが低いけど、『アンダルシア』の方が好きです。
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