◆2003/09/26 更新◆
9月8日(月)
新宿ピカデリー2で『座頭市』。
すさまじい混雑ぶり。
タイミング良く、ベネチアで銀獅子賞をとったこともあるだろうけど、それにしてもすごい混みかた。
北野映画ファンだけでなく、時代劇ファン(座頭市ファン)も巻き込んで、大混雑。
ミニシアター以外で立ち見がでるなんて、宮崎作品以外ではかなり稀な事態なのでは。
生のエネルギーに満ちた快作。
前作『Dolls』が死に彩られた物語だったのに対して、今作には肯定的なエネルギーがある。
いままでの北野映画に比べてわかりやすく、万人向けのエンターティンメントに仕上がっている。
9月11日(木)
11時、起床。
布団を物干し竿にかける。
まだまだ暑い。
上野へ。
東京国立博物館の「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」。
ギリシア、アジア、日本に至るスケールの大きい展示。
以下、雑感。
紀元前の銀貨。精巧で力強い浮き彫りが見事。美術品のよう。
有翼双峰駱駝の水差。ササン朝様式の把手付きの水差し。側面に有翼聖獣として、翼をもったふたこぶ駱駝が描かれている。翼をもった駱駝? 珍しい図像だと思う。これの少し手前に「駱駝を駆るエロス浮彫」、駱駝にまたがったエロス(ギリシアの女神アフロディテの息子)の像が展示されている。ギリシア文化がイラン系遊牧民に影響を与えたさまを示しているとのことだが、ここで面白いのがエロスとはキューピッドのことであり、翼が生えているということ。翼の生えた童子が駱駝にまたがった図像から、やがて童子の姿が消え、「翼をもった駱駝」のモチーフへと変化したのではないか? 素人考えの夢想に過ぎないけれど、想像するのは楽しい。
ギリシアの旅人と商業の神ヘルメス(ローマではメルクリウス)は、お金の入った巾着を持った姿で描かれる。この神がアジアを経て日本に来た時に大黒天(七福神の大黒さま)になる。その際、ヘルメスが持っていた巾着は、大黒天が肩に担いでいる大袋へと姿を変えたとのこと。
濃密な時間を過ごせた。
アメ横の間口の狭いラーメン屋でチャーハン。
遅い昼食をとった後、渋谷へ向かう。
上野駅、中央改札前のホールのようなところが好き。
開放的でオープンセットのよう。
光の射し込みかたが美しい。
ジョージアの新しいCMが「駅で踊る」という趣向だけど、駅の構内でいきなり踊り出すというのは『フィッシャー・キング』のパクリだよなあ。
渋谷ブックファーストで『アインシュタインの宿題』(福江純著 知恵の森文庫)、『ヨーロッパ思想入門』(岩田靖夫著 岩波ジュニア新書)。
東急ハンズでルーズリーフ、プロジェクトペーパーなどを購入。
新宿に戻って、リニューアルした伊勢丹メンズ館へ。
ターゲットを従来の25〜30歳から、35歳以上へと引き上げたそうだが、1〜3階は相変わらず。若い客が圧倒的に多い。地下の靴売場がすごい。あれだけ有名どころがそろっているのは圧巻。
高円寺のいつもの定食屋で夕食。
鳥の唐揚げ定食。
9月18日(木)
『よつばと! 1巻』(あずまきよひこ メディアワークス)。
装丁がよい。ザラついた表紙と、エクスクラメーションマークにはめ込んだタイトル。
徹底的に日常を描く。
キャラクター、台詞、ストーリー、そして『絵』……圧倒的な完成度。
“無敵”の作品。
必読。
内容は「女の子とお父さんが引っ越してきて、隣の家のお姉さんと仲良くなって、お父さんのお友達が出てきて、買い物に行ったり、セミをとったり、雨に降られたり」します。
9月26日(金)
『ヒカルの碁 23巻』(ほったゆみ・小畑健 集英社)、最終巻を読む。
手塚治虫文化賞発表の朝日新聞(2003年5月27日・朝刊)でネタバレされたせいで、読む気が失せていたけど、あんまり時間をおくと読まないでしまいそうなので、読むことにした。
以下、ラストに触れます。要注意。
……。
終わらないまま終わる、というのは極めて「少年漫画的」と言えるかもしれない。
「終わり」を読者に与えることで作品世界を閉じてしまうのでなく、読者と共にいつまでもある、みたいなカンジ(進藤ヒカルは今日もどこかで碁石を握っている。桜木花道は今日もどこかでバスケットボールを追いかけている)。
本作の場合、最終話タイトル「あなたに呼びかけている」の「あなた」が読者を指していることからわかるように、物語を終わらせない仕掛けに対して意識的。
とっても『啓蒙的』な漫画。
非常に洗練された高度な『学習漫画』。
それが狙いであるならば、その目的は充分過ぎるくらい完遂されたと言える(小学生の囲碁人口の増大)。
……だけどね、ひとりの漫画読みとしては、このラストは寂しいわけよ。
最近の、といってもここ10年のジャンプ漫画のラストは本当にダメだね。
昔は違った。
『ウイングマン』、『きまぐれオレンジロード』、『奇面組』……素晴らしかった。
『ドラゴンボール』、『幽遊白書』、『スラムダンク』、そして『ヒカルの碁』……90年代から今日まで引っぱってきたジャンプのエースはみんなラストがダメ。
どうして、こうなるのかはみんな(作者も読者も編集者も)わかってるはずなのに、このジレンマから抜け出せない。
ジャンプの夜明けは遠い。