◆2003/03/31 更新◆
３月１３日（木）
知人の靴職人（見習い）の卒業作品展を見るために東京国際フォーラムへ。
初めて行ったけど、なんともバブリーな建物。
壮大で美しい歴史的遺物。
ガラス張りの空虚な空洞の中心には８０年代の残滓が漂っている。
宴の後、て感じ。
３月１４日（金）
『動物のお医者さん』が４月からＴＶドラマ化とのこと。
何を今さら……というか、テレビ界のコンテンツ不足は深刻なんだねえ。
３月１６日（日）
先日、女の子と話をしていた時にちらっと名前が出てきた菜摘ひかるの『恋は肉色』（光文社知恵の森文庫）を読む。
著者の菜摘ひかるは元・風俗嬢のライター兼漫画家（ただし『恋は肉色』に収められている文章を書いていた時は”現役”）。
昨年１１月、「体の具合が急変し」て永眠。
享年２９歳。
本書の前半を占める『週刊宝石』に連載された文章は過剰なまでに攻撃的だが、彼女のＨＰ上の日記から構成される後半は一変、あまりにも痛すぎる内容となっている。
父親から愛されることなく成長した女の子が、セックスの代償としてお金を得ることで自分の存在価値を見出す。このとき受け取るお金は「（もらえなかった）父親からの愛」の代替物に他ならない……という非常にわかりやすい「物語」に押し込めてしまうこともできてしまうが、多分、いや絶対、そんなに単純じゃない。
彼女が抱えていた問題は彼女固有の問題であると同時に、全ての人にも通じる普遍的な問いであったはずだ。
どうしようもない「満たされなさ」と絶対的な「孤独感」を超えて、自分の人生に価値を見つけていくことの困難さ。
この世に生まれた全ての人間が直面する根源的な問い。
彼女は自分の人生に「答え」を見つけることはできたのだろうか？
母親のようにはなりたくないと願い、
「見てろよ。２０年後に乞うご期待だ。あなたより幸福な、いい女になってやる。（２０８ページ）」
と威勢良くタンカを切った女の子が、２９歳でこの世を去ってしまったのは、あまりにも悲しい。
３月２２日（土）
『サンティアゴ』（マイク・レズニック著・内田昌之訳 創元ＳＦ文庫）読了。
設定はスペースオペラ、筋立ては西部劇……こう書くと安っぽいパルプフィクション（三文小説）のように思われるかもしれないが、絶妙な語り口のおかげで、物語全体の雰囲気はかなり現代的。
伝説の賞金首”サンティアゴ”を巡る「はるかなる未来の叙事詩」。
ただひたすらに「カッコイイ」。
３月３０日（日）
新宿プラザで『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』。
両親が離婚した詐欺師（レオナルド・ディカプリオ）と、結婚指輪をしているけど「家族はいない」捜査官（トム・ハンクス）の奇妙な“父子関係”。
失われた家族の再生を願う天才詐欺師（ディカプリオ）の姿が悲しげ。
クリスマスを“家庭の象徴”として使って、最後には家族の物語に回収するあたりは、いつも通りのスピルバーグ節。
キューブリック（『Ａ．Ｉ』）やディック（『マイノリティ・リポート』）に挑戦していた頃とは打って変わって、肩の力の抜けた快作に仕上がっている。
パンフレットによるとディカプリオの次の出演作に、バズ・ラーマンの『Ａｌｅｘａｎｄｅｒ ｔｈｅ Ｇｒｅａｔ（アレキサンダー大王！？）』が挙げられていた。
ディカプリオとバズ・ラーマンといえば、あの『ロミジュリ』があるわけで。
普遍的なストーリーを、思いっきりポップに描いてみせるラーマンの作風はかなり好み。
楽しみだねえ。