◆2003/01/01 更新◆
１２月９日（月）
朝から雪。
今年初めてストーブをつける。
午前中に電話を３本。雑用を済ませた後、新宿へ。
新宿プラザで『マイノリティ・リポート』を観る。
（以下、内容に触れます。未見の方は要注意）
……
かつて、プールの中で息を止めている間に息子を失った主人公が、バスタブの中で息を止めて追手をやりすごそうとする。前作の『Ａ．Ｉ．』では主人公のロボットがプールに落ちる印象的なシーンがあった。ここではプールの中は絶対的な孤独、世界からの疎外を示していた。
１２時間経つ前に包帯を外してしまった主人公は左眼が失明したはず。その後、自分の元々の眼球も１個失くしてしまう。つまり、主人公は眼球を２個しか持てない（移植した右眼とビニール袋に入れた自分の眼球１個）。４個持つことは許されない。
主人公が探すことになる”マイノリティ・リポート”は実は……。
……
意味深な断片はあちこちにあるんだけど、最後はスピルバーグ的予定調和。
キューブリックの亡霊に怯え、無理矢理ＳＦにしようとした結果、後半がヘロヘロになった『Ａ．Ｉ．』よりは、潔くサスペンス・アクションに徹した今作の方がまとまりは良い。
夕食は近所のラーメン屋でチンジャオロース定食と餃子。
ＴＳＵＴＡＹＡに寄って、帰宅後、借りてきた『プリティ・プリンセス』を観る。
ディズニーは映画の作り方がうまい。
完璧な予定調和なのに嫌味に見えないのは「おとぎ話」だから。
ディズニーは一貫して「おとぎ話」を作り続けている。
１２月１６日（月）
新宿アカデミーで『Ｋ−１９』。
「主演がハリソン・フォード？ アメリカ大統領をやった俳優が今度はソ連軍将校かよ」というツッコミを吹き飛ばす実話の重み。
１２月１９日（木）
新宿東急で『火山高』。
ようするに『実写版 速攻生徒会』。
クライマックスは『幻魔大戦』。
驚くべきはこれが韓国映画であるということ。
世界設定が日本的記号で埋め尽くされている。
主人公は転校生で、ヒロインが学ランを着ている（！）。
詰め襟は旧日本軍を連想させたりしないのだろうか。
さらに、柔道部と剣道部はあるのにテコンドー部はないし。
能天気とも云える気楽さで日本的記号を引用しまくっている。
韓国的にＯＫなのでしょうか？
全体的に、筋の運び方が稚拙で流れは悪いけど、元気はいい。
８０年代を代表する傑作アクション『ダイ・ハード』のキーワードが「リアリズム」だったとするなら、２０００年代アクションのポイントは「馬鹿」だ。
『マトリックス』、『少林サッカー』……ギャグすれすれの馬鹿ばかしいアクションを前に観客は苦笑と爆笑のはざまで圧倒される。
『火山高』もその流れの中に位置づけられる。
ギャグなのか本気なのか判断に苦しみつつも、画面の力だけで目が離せなくなる。
１２月２６日（木）
昼過ぎ、神保町へ。
東京堂で『コラムの逆襲』（小林信彦 新潮社）、三省堂で『神様のパズル』（機本伸司 角川春樹事務所）、『世界の果ての庭』（西崎憲 新潮社）、書泉ブックマートで『あなたは虚人と星に舞う』（上遠野浩平 電撃文庫）を買う。
新宿に移動して新宿ピカデリーで『ギャング・オブ・ニューヨーク』。
スクリーンが小さい。あらかじめ知っていたら絶対ここには来なかった。
客席はほぼ満席。まあそうだろう。
男臭い映画。
日本人があれこれ云う資格はないように思う。
例えば（いい例えではないかもしれないけど）、坂本竜馬暗殺をテーマにした映画について欧米人がしたり顔で論じていたら、ちょっとムッとするだろう。
その民族に固有の『神話』のようなものであり、他国人が観るものではない。
ハリウッドの営業力によって世界規模で公開されることで、アメリカ的マッチョ精神の充満するこの映画について反感を抱く人も多いだろうし、映画の持つメッセージがある種の政治性を発揮することを批判する向きもあるだろうが、本質的にこれは「国民映画」である。アメリカ人によるアメリカ人のための映画なのだ。
ダニエル・デイ＝ルイスは別格。
ディカプリオは良くもないし悪くもない。
つまり、この映画だけ観たらふつうの俳優にしか見えない。
キャメロン・ディアスは……。
この人はやっぱりコメディの人だね。顔が「不幸顔」じゃない。
メジャーな正月映画（洋画系）はひと通り観たけど、１本だけ薦めるなら『Ｋ−１９』。
『ハリポタ』はお子様ランチ、『マイノリティ・リポート』はいまいち腰くだけ、『ギャング・オブ〜』は日本人が観てもしようがない。
『Ｋ−１９』は観る価値がある。
１２月２８日（土）
『ダークホルムの闇の君』（ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 創元推理文庫）読了。
『九年目の魔法』もそうだったけど、ジャンルに対する自意識が異常に強い。
今作では通俗的なファンタジーをメタ視する形でストーリーが進行していく。
こっちの世界とつながった「ありがちな」ファンタジー世界が舞台。
こちら側から年に一度訪れる「冒険者」を「接待」する異世界の住民たちの物語。
冒険とスリルを提供するために、「魔物の襲撃」とか「海賊の出現」とか「魔女の館」とか「善と悪の軍勢の激突」とかのイベントを準備していく様がユーモラスに、だけどシニカルに描かれる。
悪意と善意の共存する世界の姿を暴いていくプロットの本質は極めてシリアス。
グリフィンの兄弟が超ラブリー。
１２月２９日（日）
山瀬移籍。
彼の成長を願う。
１２月３０日（月）
ビデオで『キューティ・ブロンド』を観る。
基本はビルドゥングス・ロマン。
学園ものと思いきや後半は裁判劇。
美少女法廷というか、「キュートな女弁護士」というキャラクター像が『アリーｍｙラブ』を下敷きにしていることは明らか。
ヒロインがすっごいオシャレ。
１２月３１日（火）
大晦日らしく１年を振り返ってみようということで、今年のベスト小説を。
『アラビアの夜の種族』（古川日出男 角川書店）。
読書量が絶対的に少ないので説得力は全然ないけど、今年１番面白かった小説はこれです（発行は昨年の１２月）。
１８世紀。ナポレオンの軍勢が迫るカイロを舞台に、伝説の奇書『災厄の書』を巡る陰謀と、その本の中身が同時並行で語られていく。
ブッキッシュな仕掛けが張り巡らされた複雑な小説だが、圧倒的な語りの魔力の前に一気読みは確実。
実は、某超有名コンピュータＲＰＧが元ネタ。
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