◆2002/12/01 更新◆
１１月３日（日）
『西の善き魔女 外伝２』（荻原規子 中央公論C★NOVELS）読了。
これにて『西の善き魔女』完結……と思いきや、あとがきによると続編を書く予定があるとか、ないとか。
荻原規子は栗本薫、小野不由美らに連なる”物語の巫女”の系譜を継ぐ作家であり、作劇の組み立てが抜群。日本人でこんなに「物語」を作るのが上手い作家は珍しい。
出世作『勾玉三部作』はど真ん中ストレートの正調和風ファンタジーだったが、『西の善き魔女』はありがちな西洋風異世界ファンタジーと思わせておいて……ラストでは〇〇になる変化球。
古典的な物語の面白さ（辺境から始まった物語が学園ものになり宮廷陰謀劇を経て、〇〇へと至るストーリーの振幅の大きさ）とオタク的な洒落っ気を併せ持つ快作。
１１月４日（月）
『郵便的不安たち♯』（東浩紀 朝日文庫）を読む。
単行本で既に読んでいるが、文庫化にあたって大幅な加筆がされているので、その追加分だけを拾い読み。
『ナデシコ』は難しい、という見解に同感。
『ナデシコ』はとても難しい。
それは『エヴァ』のわかりやすさとは対照的だ。
ひと昔前のOVAみたいな雰囲気を漂わせて（オンチなエンディングとか、これ見よがしなキャラ配置とか）、膨大な引用を散りばめた大オタク伽藍的ＳＦアニメの意匠を装いつつ、作品が狙っているところは実は極めて過激。
第１４話の劇中劇の二重構造。
第１３話の放送日は１２月２４日。劇中でもクリスマスパーティが開かれ、翌週放送（放送日は大晦日）の第１４話では劇中でお正月をやっている。
ただの遊びのようにも思える他愛ない演出に見えるが、表面上の第１４話である総集編が劇中アニメの『ゲキガンガー』に取り込まれ、さらにそれのひとつ上の階層に『ナデシコ』のキャラが置かれているという複雑な第１４話の構造を踏まえると、単なるスタッフのおふざけとは云えなくなる。
そこにおいては『ナデシコ』と『ゲキガンガー』と視聴者の世界の境界が意図的に曖昧にされ、現実と虚構の対立という無邪気な図式では把握できないレベルに到達している。
その後も第２１話の記憶マージャンのようなメタフィクション的仕掛けを繰り出して視聴者を翻弄させながら、ストーリー自体は「力」と「戦争」と「僕」と「私」の物語を語ってみせるという離れ業。
難解です。
１１月５日（火）
「ライトノベルファン度調査」結果。
３００作品中、４８作品（投票者の平均は３９．８５作品）。
６６７４人中、２０１８位。
近作になるほど未読率が高い。
「古典」でポイントを稼いだ感じ。
１１月９日（土）
シネマスクエアで『少林サッカー インターナショナル・バージョン<英語版>』を観る。
「コメディは原語で」という俺ルールには反するが、この機会を逃したら二度とスクリーンで観ることはできないと思うので。
噂どおりの怪作。必見の１本であることは間違いない。
近くの豚骨ラーメン屋で遅めの昼食の後、シネマミラノで『スズメバチ』。
軽い気持ちで入ったけど、これはいいです。久し振りにイキのいいアクション映画を観た。
マフィアのボスを護送する特殊部隊とボスの奪還を狙う武装グループの戦闘にチンピラ窃盗団が巻き込まれ、さらに元消防士の警備員が絡んでいく。。
錯綜した序盤を経てキャラクター配置が終了すると、あとは一本道。
冒頭にチンピラ達が口笛で『あの』フレーズを口ずさむことからわかるように、これは西部劇です。
保安官事務所に立てこもる主人公達に襲いかかるならず者の集団（あるいはインディアン）という西部劇の定番プロットを保安官事務所を深夜の倉庫に、ならず者をマフィアの戦闘部隊に置き換えて「ひと夜の攻防戦」が展開される。
西部劇では定番の図式でも、実は「立てこもり型」のアクション映画は結構珍しい。
ほとんどのアクション映画において主人公は「攻める人」である。
「立てこもって」いる悪漢のアジトに乗り込んでいく主人公。救出されるヒロイン。
「剣」としての主人公。
「戦士」には「剣」と「盾」のふたつの側面があるが、創作の世界では「剣の戦士」の方が多数派なのだ。
で、個人的には「盾の戦士」が好きなんだよね。
話がずれた。
立てこもり型アクション映画と云えば、有名なのは『エイリアン２』。
倒しても倒してもワラワラと出てくるエイリアン達。圧倒的な閉塞感。
もう１本、立てこもり型アクションを挙げよう。
『ゾンビ』。
主人公が立てこもる巨大ショッピングセンターに押し寄せてくる無限とも思えるゾンビの群れ。
外部への連絡は途絶え、夜明けは遠い。
襲撃者がゾンビという「無名性の高い集団」であることに注目。
『エイリアン２』でも襲撃側（エイリアン）は「顔のない」キャラクターであり、非人間的な存在として描かれている。
立てこもり型アクションにおいて、襲撃者は「人」ではないのだ。
『スズメバチ』でもマフィアの戦闘部隊は全員、暗視装置付きのマスクをかぶっており、顔は全く見えない。
主人公たちは、「誰と」戦っているのだろうか？
そして、それは「何のため」なのだろうか？
夕食は近所の定食屋で穴子てんぷら定食。
１１月１３日（水）
今夜の『ＨＲ』。
素晴らしい出来。
個人的には第１話以来のヒット。
１１月１８日（月）
午前中に仕事をひとつ片付けた後、日比谷スカラ座で『モンテ・クリスト伯』を観る。
ずい分昔にダイジェスト版を読んだだけなので、はっきりしたことは云えないけど、後半の展開が原作と大きく違う（と思う）。原作は、もっと突き放したラストだったような気がする。今作の結末はとても「家庭的」。
とはいえ、原初的なプロットの力強さは健在。
試練、獲得、帰還……。
紛れも無い『神話』である。
神保町に移動して、白山通りの洋食屋に入る。
ポークカツ＆豚肉野菜炒めのランチ。
書泉グランデで『神話の法則』（クリストファー・ボグラー 愛育社）を買って帰る。
１１月２１日（木）
昼から神保町へ。
三省堂で『貧乏神髄』（川上卓也 ＷＡＶＥ出版）、書泉ブックマートで『司星者セイン 魔都胎動』（ベニー松山 集英社スーパーダッシュ文庫）、『神さまのつくりかた １４巻』（高田慎一郎 エニックス）、『振袖いちま ３巻』（須藤真澄 エンターブレイン）を買う。
裏通りの中華屋で昼食（ナス肉炒め）。
ＢＧＭが思いっきり時代錯誤。
「愛は勝つ」、「ｊｕｓｔ ｍｙ ｇｉｒｌ」、「ラブストーリーは突然に」、「夢を信じて」……。
いつも、こうなんだろうか？
１１月２５日（月）
文化村で『至福のとき』を観る。
チャン・イーモウはあざとい。
キャラクターの造型はわかりやすく、筋立てもシンプル。
ひたすら泣きのツボを押しまくる。
大人のやさしい嘘が少女を（少年を）癒す……。
『ライフ・イズ・ビューティフル』、『聖なる嘘つき』など映画ではメジャーなプロットだけど、オリジナル（本家）はあるのか？ ちょっと気になる。
１１月２７日（水）
明日はやっすみ〜♪ と、浮かれていたら、帰宅後、仕事の段取りを間違えていたことに気付く。
明日、会社に行かナケレバ、うーん。
１１月２８日（木）
ひと仕事してから、新宿ピカデリーへ。
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』を観る。
場内は思ったより空いている。余裕をもって座れる感じ。
スクリーン数が多いから、自然と観客が分散するのだろうか。
初日さえ避ければ、相当の話題作でも座って観られそう。
人気作の場合、東京の映画館では立ち見を覚悟していたんだけど、杞憂かもしれない。
案外、ミニシアター系の方が立ち見の可能性があったりして。
『秘密の部屋』は良くも悪くも「お子様ランチ」。
受ける要素がたくさん入っていてサービス満点。
だけど、個々の要素を取り出して、単体で見ると物足りない。
スパゲッティもピラフもプリンも入っているけど、それぞれ単品で頼んだ方がおいしい、みたいな。
まあ、これはこれでいいのではないでしょうか。
「お子様ランチ」としての役割は充分過ぎるくらい果たしている。
大人があんまり夢中になるのはアレだけど、それも個人の自由でしょう。
願わくは、子供達がこの先、『プリデイン』、『ゲド』、『指輪』と読み進んでくれることを。
Ｐ．Ｓ
ゲドの新作が発表されるらしい。読みたいよな、読みたくないよな。
さらにＰ．Ｓ
『プリデイン物語』復刊しないかな？
手にとりやすい判型と価格で。
ポストハリポタ狙いの柳の下のドジョウなんか追っかけてる暇があったら、豊穣なるファンタジーの原野に目を向けてほしいよね。まったく。
そーだ！ アニメ化しようよ、『プリデイン物語』。
昔々、アーサー王のＴＶアニメがあったんだけど、覚えてる人いる？
１１月２９日（金）
「ご飯のおいしい定食屋は、おかずもおいしい」
この逆は真ではない。
つまり、おかずがおいしくても、ご飯のまずい定食屋はある。
１１月３０日（土）
コンサドーレ最終戦について。
こーいうエゲツなさは大切である。
プロとして。