◆2008/12/30 更新◆
９月１日（月）
人生を投げ出さないことが一番大事。
９月２日（火）
晴れ。風はあるが日差し強い。
渋谷シネアミューズウエスト、『この自由な世界で』。
まぎれもなく映画なのだが、ドキュメンタリーを見ている気にさせられる。
ケン・ローチ節が全開。
移民と不法就労を巡るロンドンの物語はローカルでありながら、グローバルな問題へと接続している。
世界は生きていくことさえ困難な場所になりつつある。
イギリスも、日本も。
９月８日（月）
日中はジム。
夕方より街へ。
原宿のユナイテッドアローズでＭ−６５タイプのレザージャケットを買う。
『ヤングサンデー』の休刊により、いくつかの作品が『スピリッツ』に“お引越し”。が、フリーターを主読者層に据える『スピリッツ』の誌面に、高校生向け、オタク向けの漫画は合わない。違和感ありまくり。
９月１２日（金）
残暑。風はある。
銀座へ。
トレーディングポストにクロケット＆ジョーンズのストレートチップを預ける。トップリフトとつま先の修理。
夜は池袋サンシャイン劇場で『戸惑いの日曜日 〜アパッチ砦の攻防より〜』（脚本：三谷幸喜 演出：佐藤Ｂ作）。嘘の上塗りが状況をヒートアップさせる。にぎやかな喜劇。
９月１９日（金）
夜、シアターコクーンで『人形の家』（作：ヘンリック・イプセン 演出：デヴィッド・ルヴォー）。
個人と社会、女性の自立を描く近代劇の古典。
ノラを演じた宮沢りえの磁力が目を引く。
あのラストシーンは女優に力がなければ説得力が生まれない。
社会的には「弱い」。職はない、保護者もいない……にも関わらず、物語が始まったときよりもあきらかに「強く」なったノラがそこに立つ。
９月２５日（木）
晴れ。
渋谷シネマライズで『ＴＯＫＹＯ！』。
３人の監督による東京を舞台にしたオムニバス。
最大の問題は描かれている街が東京にみえないこと。
第１話「インテリア・デザイン」における雑然としたひとり暮らしの女の子の部屋はとてもよいが、街の描写は平凡でつまらない。
第２話「メルド」は外国人が日本を撮ったときにハマる典型的な罠に陥っている。ようするに日本に見えない（『バベル』と同じ）。
第３話「シェイキング東京」は３作品中、最も出来がいいが、やはり東京には見えない。引きこもりというテーマもどちらかというと地方都市向き。
思えば『ロスト・イン・トランスレーション』は外国人が撮った「東京映画」として見事であった。
９月３０日（火）
先週から気温が急激に下がる。スーツを冬物に替えた。
雨。
改装された新宿ピカデリーで『崖の上のポニョ』。
白い内装で統一されたロビーは明るく広くて清潔感にあふれているが、どこか寒々しい。
「時代に取り残された重厚さ」とでも呼ぶべきものを漂わせた以前のピカデリーでハリウッド大作を観るのが好きだった。
シネコンとして生まれ変わり、スクリーン数も増えて、経営的には持ち直すことになるのかもしれないが、個人的には足を運ぶ機会は減るような気がする。
１２７席の小さなスクリーン。観客は２０人ぐらい。
人が何を考えているかなんてわからない。ましてや天才の胸の内など。
渾身の超大作『もののけ姫』（テーマ、技術の両面において集大成）を批評家にクソミソにけなされ、自分の中で何かにケリをつけたのかもしれない。元々、『カリ城』を作る前から「引退する」とか仰っていた方だし。
思えば『ハウル』は分裂していた。『ナウシカ』『ラピュタ』に連なる「いわゆる」宮崎アニメと『トトロ』『千尋』の「児童向け」アニメの狭間で、どちらに向かうか答えの出ないまま完成させてしまった苦しみが画面に満ちていた（ひらたく云えば失敗作ということ）。
で、『ポニョ』である。
作品のターゲットである子どもたちが楽しんだのなら、それについて「部外者」がとやかく云うことではないかもしれない。
だけど、それでもやっぱり脚本がひどすぎる。説明不足が甚だしく、結末に説得力が生まれないのは前作『ハウル』と同じ。説明を省略するのは構わない。トトロの正体や猫バスの意味は説明されていない。
以下、ネタばれ。
クライマックス。
ポニョを渡せ、一緒においでと迫るフジモトの手を逃れて走る宗介（主人公）。
結局つかまるわけだが、この時フジモトの云うことにおとなしく従ったとしても物語の展開は変わらない（結末は同じ、いずれもハッピーエンドになる）。ようするに宗介が走った意味がない。
主人公が何も行動を起こさなかったらＡ→Ｂ→Ｃになる展開を主人公の行動によってＡ→Ｂ→Ｘに変えること。登場人物たちの感情や目的が絡み合いながら、因果関係を示して新しい地平（局面）に到達すること。それが脚本だ。
ポニョのお母さんのひと言で丸く収まる程度の危機を描くのに１０１分も使うな。主役２人の恋愛の行方（好き／嫌い）が世界の存続に直結する。宮崎駿によるセカイ系。書いていて少し悲しくなってきた。
保育園と老人ホームが隣接していたり、中盤の「世界がひっくり返る」大仕掛けは素晴らしいのだが。
『耳すま』『もののけ姫』があれほど酷評され、『千と千尋』『ポニョ』が絶賛されるのは何故なのだろう。そういう時代だったのだろうか。拒絶と批判の時代は終わり、受容と赦しが求められている？